生きることが苦であることを具体的にいうと、仏教では四苦になります。
「生・老・病・死」がそれです。
人間は生まれた瞬間から老・病・死の道に歩みだしていくのです。
しかし現代では「老、病」への対策はずいぶんと進み、「生」の時間が延ばされています。
ですから私たちは「生」の本当の意味を、もっと知り、充実させる必要があるのです。
生の苦の原因は欲にあります。
欲が次の苦をよぶのです。
たとえば「求不得苦」、ほしいものが手に入らない苦しみをこういいます。
お金やものだけではなく、愛情、名誉も悩みの原因になります。
また、人はひとりでは生きられません。いろいろな人に出会います。
会えば感情が動き「怨憎会苦」と「愛別離苦」が生まれます。
怨憎会苦とは嫌な人に出会うこと。
愛別離苦とはどんなに愛している人でも、いつかは別れはくることです。
原因は愛が消えたことかもしれませんし、死かもしれません。
では人嫌いなら、苦は減るのでしょうか。
『般若心経』の中に「色即是空、空即是色、受想行識もまたかくのごとし」という一節があります。
色とは形あるもの、肉体の意味ですから、直訳すれば
「体の中の心が空ならば、何も見えない。感じ(受)、察し(想)、念じ(行)て、認識(識)しても同じことだ」とも読めます。
釈迦はこの色=物質的なものと、受、想、行、識=精神的なものをあわせて五陰ごおん(五蘊ごうん)といい、
生きているもののすべての要素だと考えました。
そして、この五陰がすべて苦だとしたのです。
これを「五陰盛苦」といいます。
ここが釈迦の出発点でした。
つまり、たったひとりで生きても、人間としての苦の状態からは抜け出せないのです。
苦とは | 四苦八苦 @〜G |
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四苦 人間が避けられない苦しみ @〜C |
欲によって生まれる苦しみ D〜G |
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@生 | 生きていく苦しみ | D求不得苦 | 欲しいものが手に入らない苦しみ | |
E怨憎会苦 | 嫌な人に会わなければならない苦しみ | |||
F愛別離苦 | 愛する人と別れる苦しみ | |||
G五陰盛苦 | 苦しみを苦しみと感じる苦しみ | |||
A老 | 老いていく苦しみ | |||
B病 | 病を患う苦しみ | |||
C死 | 死ぬ苦しみ |
「生・老・病・死」に、あと四つの苦を加えて、これを八苦といいます。
欲の心が盛んな間は、四苦八苦の状態が続くのは当然のことなのです。