ジュズとネンジュ

 個人的に日頃接する機会の多い「曹洞宗」の葬儀について、興味深いので参考書を頼りにまとめてみようと思います。所詮参考書ですから、慣習は地域によってちがいがあって当然です。

 一応、曹洞宗の儀式を定めている「曹洞宗行事規範」に所載の
「檀信徒喪儀法」に沿ってまとめてみます。

1.葬儀のまえ

 1)臨終諷経(枕経)
  ・・・唱えるお経「遺教経」「舎利礼文」

 2)通夜諷経(葬儀前日)
  ・・・「修証義」「大悲心陀羅尼」「観音経」など

2.葬儀式

 1)剃髪<一度剃髪・授戒し、出家者と同じ仏弟子として僧侶の葬儀法に準じて行う
  ことが原則となっている
  ・・・古来は実際に剃髪したが、現在はまねごとだけである。

  合掌して香を焚き、次の偈を3回唱える
「流転三界中 恩愛不能断 棄恩入無為 真実報恩者」

  次に剃刀を手に持ち、合掌して次の偈を3回唱える
「剃除鬚髪 当願衆生 永離煩悩 究竟寂滅」

 2)授戒<曹洞宗の葬儀の中心は授戒である

  導師は戒尺を3度打ち鳴らし、次の文言を唱える
「それ新帰元○○信士、帰戒を求めんと欲せば、先ず当に懺悔すべし。
二儀両懺有りといえども、先仏の護持したまう所、曩祖の伝来したまう所の
懺悔の文有り。罪障悉く消滅す、吾が語に随って之れを唱う可し。
我昔所造諸悪業 皆由無始貪瞋癡 従身口意之所生 一切我今皆懺悔」


「すでに身口意の三業を懺悔して、大清浄なることを得たり。
次にはまさに仏法僧の三宝に帰依したてまつるべし。
三宝に三種の功徳あり、所謂、一体三宝、現前三宝、住持三宝是れなり。
一たび帰依するとき、三種の功徳、悉く円成す」


  以上を唱えたあと、酒水器(しゃすいき)を取り、導師の頭上より法性水を器に移し、
  次いで位牌の正面、右、左に水を洒ぎ、再び自身の頭上に返してから戒尺を
  1度打ち鳴らして三帰依文を唱える。続いて、次の文言を唱える。

「帰戒を授与することかくの如し。今自り以後、如来至真等正覚は、
是れ新帰元○○信士が大師なり。更に余道に帰依せざれ。
南無大慈大悲大哀愍故」


  引き続き三聚浄戒を授ける
「既に仏法僧の三宝に帰依す。次にはまさに三聚浄戒を受けたてまつるべし。
第一摂律儀戒 第二摂善法戒 第三摂衆生戒是れなり」


  次に十重禁戒を授ける
「次には、応に十重禁戒を受けたてまつるべし。
第一不殺生戒 第二不偸盗戒 第三不邪淫戒 第四不妄語戒 
第五不こ酒戒 第六不説過戒 第七不自賛毀他戒 第八不慳法財戒 
第九不瞋恚戒 第十不謗三宝戒是れなり。
上来、三帰、三聚浄戒、十重禁戒、
此れは是れ先仏の護持したまう所、曩祖の伝来したまう所なり。
我れ今汝に授く、汝今身より仏身に至るまで、此の事護持したてまつるべし」


  以上で授戒を終えたところで、導師は血脈を授ける。
「此れは是れ、仏祖正伝菩薩大戒の血脈なり。
仏々祖々、嫡々相承して、我に至る、
我今新帰元○○信士に授く、汝今身より、仏身に至るまで、頂戴護持したてまつるべし」


  血脈を祭壇に安置して次の文言を唱える。
「衆生仏戒を受くれば、即ち諸仏の位に入る、位大覚に同じゅうしおわる、
真にこれ諸仏の子なり、南無大慈大悲大哀愍故」


 3)入棺諷経(遺体を棺に納める)
 4)棺前念誦(大夜念誦)
 5)挙棺念誦(棺を運ぶ儀式)
 6)引導法語(亡き人を導き送る言葉)
 7)山頭念誦(火葬または土葬を行う儀式)

3.安位諷経(火葬または土葬のあと、位牌を安置して行う法要)

■曹洞宗の法事
 葬儀の後、初七日、四十九日、百ケ日、1周忌、3回忌、7回忌、13回忌、17回忌、23回忌、25回忌、33回忌、37回忌、50回忌、百回忌等々年回法要(法事)が行われる。地方によって、25回忌を抜いたり、43回忌を加えたりと習慣に違いがある。

 法事のお経も「修証義」「大悲呪」「観音経」「甘露門」「寿量品偈」などがよく読まれるが決まりは無い。
 しかし、仏法僧の3宝と釈迦牟尼仏と高祖道元禅師・太祖系瑩山禅師の一仏両祖に帰依することで、仏の教えに従い生きることを誓い、その心で亡き人を偲び、報恩感謝の真を捧げることが肝要となっている。


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